大城助教らが合成燃料(e-fuel)を活用した世界CO2ゼロ排出シナリオについてプレスリリースを発表しました(2023年7月)

気温上昇を 1.5℃に抑制するため、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書では、2050 年頃 に世界全体での CO2 排出量をゼロとする複数の代表的なシナリオが示されました。それらは、バイオマス・ CO2回収貯留(CCS)による負の排出、民生や運輸等のエネルギー需要部門における急速な需要低減、電化技 術への転換を必要としていますが、これらのシナリオの実現には多くの課題が指摘されてきました。本研究で はこれらに依存しない新たなゼロ排出シナリオとして、炭素回収利用(CCU)を活用するシナリオを提示しま した。これは、大気中の CO2を直接回収する技術(DAC)と、再生可能エネルギー電力起源の水素を用いた合 成燃料、いわゆる e-fuel を利用するものです。本研究の結果、このシナリオでは、合成燃料が世界のエネルギ ー需要の約 3 割に達し、電化等の急速な需要転換を回避しつつ CO2 ゼロ排出を達成し得ることが分かりまし た。他方、直接空気回収や太陽光・風力発電の急拡大を伴うため、必要となる追加費用は電化を用いたシナリ オの約 2 倍となることも明らかになりました。このように、CCU シナリオは、需要転換等が遅れた場合の代 替となり得る一方で課題も多いことから、電化等の対策も含めた包括的な戦略の重要性が示唆されました。本成果は、日本時間 2023 年 7 月 14 日真夜 0 時に Cell Press が発行する国際学術誌『One Earth』にオンライ ン掲載されました。

【京都大学ホームページ研究成果】https://www.t.kyoto-u.ac.jp/ja/research/topics/20230714
【藤森研究室】https://www.athehost.env.kyoto-u.ac.jp/
【論文】https://doi.org/10.1016/j.oneear.2023.06.005

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